むかしばなし

ケンケンのむかしばなし18 山の生き物たち

野良猫

これまで色々な山の生き物が登場した。声はすれども姿は見えず、という生き物もいる。タヌキは見たことがあるがキツネは見たことがない。しかし山中からの叫び声はキツネなのだ。タヌキは漫画に出てくるような丸いものではない。犬よりは少々丸いか、という程度。熊の生息地だったら子熊はタヌキに見えるかもしれない。野ウサギの糞はあれども姿は見えず。夜行性なので当然だろう。幸い我が家の近くにイノシシは出てこなかった。南側に一山超えるとイノシシ除けがあった。我が家が被害のあった生き物とすればカラスだろう。家近くの畠なら目に入るが山奥の畠はカラスの天下だ。夏のウリ、スイカは全滅することもあった。「カラスは頭がエエ、そろそろ収穫しようか、と思った頃に食べにくる、スカーン」と母がよくこぼしていた。楽しみにしていた赤いスイカ、黄色いスイカ、小ぶりだったけどおいしかった。

生き物で困ることはなかったが怖かったのはヘビだ。山にはいない、麓にいる、小川のそばにいる、などと子供のころから教えこまれた。実際は山中の我が家のまわりには沢山のヘビがいた。多いのはシマヘビ、ヤマカガシ、ハミ(マムシ)。ハミは噛むが食む(はむ)となしハハミとなったのが語源らしい。確かにハミは攻撃してくる。毎年、一升瓶に捕まえたハミを見ていた。ハミや他のヘビを捕まえる竹の先が割れた道具があちこちに置いてあった。父は捕まえるのが上手かった、と思う。家族で噛まれた者はいなかったと記憶するがどうだろうか。別格で多い、そして大きかったのは青大将。昔あった馬小屋上の土蔵、その瓦の穴に腹部のみが見えた。これがかなり太い。こいつが出てきたらどうなるのだろうか?「こわいの~」「ありゃ内の家主じゃけ怒らしちゃいけんよ」「どの家にも一匹はおるんよ、家主のヘビが」「ヘビは神様の使いじゃけ大事にせんと」と母に教えられたものだ。きっと今も縁の下にでもいるのではないだろうか、

我が家は昔、猫屋敷、とい言われていたと叔父さんに聞いたことがある。祖父が瀬戸内海の島から越してきたときは今より南に住んでいたらしい。ある日、猫が坂道を登っていくのをついて行くと今の屋敷に着いたという。空き家だったのでそこに引っ越したなんておとぎ話のような話だ。事実私が子供のころから猫を飼うと、野良猫まで集まってきたものだ。その後、飼い猫がいなくなっても野良猫は何代も続いて住み着いていた。猫がいる土地は平和と聞くがおかげで私たちも安全安心で?育ったのかもしれない。

鶏を沢山飼っていたのはすでに述べたが考えていれば不思議な光景だ。広い庭が手作りの鶏小屋だらけだった。どう思い出しても素人の飼育だったが、それでも毎年ヒヨコが生まれていた。鶏を可愛いと思ったことは無いが違和感もない。夕方は放し飼いなので友達が来るとびっくりしていた。新鮮な卵がいつでもあったのはありがたいことであった。自給自足の穀物、野菜だけでは大きくなれない。鶏小屋の中に我が家の名物、自家製の防空壕があった。祖父と父の力作だ。これは歴史遺産として残すべきではないだろうか?

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