八代には大学時代の後輩が住んでいることもあり気になっていた街だ。福岡に住んだ5年間は熊本、八代、人吉は仕事と私事でよく通った。球磨焼酎が有名な地域だが魚も肉も旨いので楽しい思い出が多い。2016年の熊本大地震は大きな被害が出たが落ち着いてからまた通うと馴染みの居酒屋は再会を喜んでくれた。元気に会って飲むのが一番だ。
八代の駅前はやや寂しい。しかし日本製紙の大工場と大煙突がものものしい。風向きによっては異臭がするのだが街を支える企業だけに多少は慣れるしかないだろう。繁華街はやや離れているがここも城下町なのでお城が中心の町だということか。直線では日本トップ?の屋根付き商店街が自慢だそうだがさすがにかつての活気は想像するしかない。夜は早くから人気が少なくなるのはどこの地方都市も同じだ。
熊本駅から鹿児島本線を走ってきたSL人吉号は八代駅から肥薩線に入っていく。架線の下を走る蒸気機関車よりも架線に無い球磨川沿いの旅がここから始まる。新幹線の駅である新八代は一つ駅が違うので高架線の邪魔が八代駅にないのは幸いなり。2012年の発車シーンでは街中なのに遠慮の無い黒煙を出してくれた。おかげで青空に工場の大煙突、蒸気機関車の迫力の一枚が撮れた。
八代駅から南下する肥薩おれんじ鉄道で日奈久温泉がある。泊まったのは1回だが立ち寄り湯では複数回、訪問したことがある。古式ゆかしい銀波楼という温泉旅館が立派だ。立ち寄り湯だけでもリッチな気分になれるのが良い。玄関、廊下、待合にいると大正ロマンかとタイムスリップ気分となれる。この辺りは山口県出身の漂泊の詩人、種田山頭火もお気に入りの土地らしい。句碑や記念碑がある。そういえば人吉の阿蘇神社前にも句碑があった。肥後の皆様に愛されているようだ。日帰り温泉専門の晩白柚温泉も名所となっている。贅沢な温泉気分となる。
熊本駅も改装されて列車の発着が高架線となった。幸いに新幹線開通時に出来たであろう駅ビル正面は好ましいままであり、ようやく県庁の駅として相応しいものになった、と言うことだろう。ここも駅前は寂しいもので繁華街へは駅前の路面電車に乗っていくことになる。やはり熊本城中心に県庁、市役所があってその周りに繁華街がある、というお約束通りの町並みだ。時にあとからできた駅前の繁華街が古くからある官庁街や城下以上に栄えることもある。2か所で競い合う方が我々一般大衆にはありがたいのだが。