大分県と熊本県を繋ぐのが豊肥本線だ。パソコンだと漢字変換で放屁と出てしまうので笑ってしまう。豊の国と肥の国。肥の国というより阿蘇山があるから火の国の方が合う。豊後の国と肥後の国を繋ぐ、と言えば一番しっくりするだろうか。
一番の見どころは今でも雄大な阿蘇山の外輪山。それを登るスイッチバック。立野駅からの支線、南阿蘇鉄道(国鉄時代は高森線)。残念ながら2016年の熊本大地震で豊肥本線、南阿蘇鉄道は甚大な被害を受けた。毎年の大雨、台風でも被害を受けていたが今回はさらに厳しい、立野駅からの鉄橋は絶景だったが、4年たったいまでも一部開通のままだ。全線開通までの道のりはまだ遠い。豊肥本線は2020年に全線復旧し開通した。
99年頃はSLあそボーイが走っていた。99年8月のお盆休み、私は横浜から山口まで愛車で帰省していた。さらに足を延ばして熊本までドライブしてSL列車を撮影した。台風が近いせいで晴天だけど強風の日、まさにあえぎながらSLがスイッチバックで上ってくる。いくら復活SLでも無理があったのだろう、今では坂道の少ない肥薩線で人吉号として走っている。
立野のスイッチバックで山を登るとまずは赤水駅がある。正に鉄分を含んだ赤い水が出たのだろうか?SLあそボーイはさらに先の宮地駅が終点だった。SL運転がなくなった後に訪れてみたが静かな山間の駅だった。でもちゃんと転車台が残っていてSLが方向転換していたことがわかる。もう使うことはないのだろうか、と思うと寂しくなってしまった。
阿蘇高原鉄道に乗ってみた。立野駅を発車するといきなり下り坂で鉄橋(白川第一橋梁)を渡りトンネルに突入する。トロッコ車両だからスピード感があり、トンネルに入ると真っ暗の中、轟音が響いて怖いほどだった。スリル満点、というところだ。思わず声が出るのも当然だろう。ちょっとした遊園地のジェットコースター気分を味わえる。
トンネルと抜けると別世界、静かな、しかし広大な阿蘇盆地に出る。このギャップが夢の世界に入ったように感じさせるから不思議だ。田園や牧場、湧き水の名所など見どころは多い。終点の高森駅につくと昭和な世界がそのままだ。よくぞここまで線路をひいたものだ。駅前によく整備された保存SLがあったが2020年、福岡への移動がきまった。町では維持できない、ということだがスクラップにならずに済んだことは幸いであった。