日豊本線は長い。宮崎県に入ってもひたすら南北に延びる線路。さぞかし単調か、思いきやいざ乗車してみると海、山、その峠越えがあって景色に飽きることがない。豊後の国から日向の国に入るとまずは延岡が大きな城下町である。大きな工場がある産業都市だが現代の企業城下町ともいえる。城下を歩けば徐福さんゆかりの街だったり、寿司のレタス巻、チキン南蛮の発祥の地であったりする。城跡、保存SLのデゴイチ見学もできる。古いものを大切にしながら新しもの好きな風土なのだろう。
日豊本線沿線で忘れてはいけない街に高鍋がある。江戸時代、ここは田舎の小藩であるが江戸屋敷で生まれた子はやがて米沢藩上杉家の養子となり藩主となる。かの上杉鷹山公とだ。高鍋はそのゆかりの地だが本人は訪れたことは無いらしい。高鍋藩は秋月氏だが以前は福岡の南部にある秋月城の城主、秀吉の九州征伐後、高鍋に移された。歴史は巡る。
高鍋駅ホームから見える看板
宮崎市に入るとさすが県庁、という力みは感じない。それくらい駅前は静かなものだ。下車して官庁街に向かうと商店街、飲み屋街があるが南国のおおらかさを感じることができる。神話の世界として、日向はひむかの国として観光ネタには事欠かない。確かに神武天皇、高千穂、海幸山幸伝説など古事記の世界を沢山目にすることができる。そんな事は露知らず、蒸気機関車のいる頃の1974年春、私はここを訪れている。
宮崎駅近くの観光ホテルに泊まると大淀川の鉄橋がよく見下ろせる。川土手を散歩しても楽しいところだ。キハの気動車、電車、特急電車が行き来して見ていて飽きない。74年頃は蒸気機関車が煙をたなびかせて快走していた。汽笛が遠くに近くに聞こえる、そんな郷愁とも旅愁とも言える、甘酸っぱい気分を思い出した。